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『俺はまだ本気出してないだけ 5 』を読んだ

青野春秋の『俺はまだ本気出してないだけ』の5巻を読んでみました。

『俺はまだ本気出してないだけ』はこの巻で完結しています。はたして中村パーソンこと大黒シズオは漫画家としてデビューできるのか?最初に読んだ時は、上手くその辺はボカされているように思えましたが、『完結編 鈴子 後編』を読むと答えははっきりと描かれていました。

4巻に続いて5巻も笑い少なめでシリアスでハードな物語が続いていていきます。離婚した元妻が再婚しアメリカに渡ることで息子と逢えなくなることに絶望したシズオの親友の宮田は失踪してしまいます。取り残された市野はシズオとパンヤ屋を続け、シズオも漫画家デビューを諦めず、漫画を書き続けます。宇波綾の「手紙を書くように漫画を描け」というアドバスでシズオは漫画家デビューへの道を突き進んで行くというお話。

全5巻の中で一番シズオは本気を出しているように見えます。しかし、朝っぱらからワインを飲んで志郎に丸めた新聞紙を殴られたり、相変わらずな感じでもあります。

中村パーソンが描いた『パンを焼く』という漫画も挿入されています。宮田がモデルになっていている話で地味な感じが否めません。

一番グッと来るのは『完結編 鈴子』ですね。シズオの元妻で鈴子の母であるアカリもほんの少しだけ登場します。中学で鈴子がイジメられるシーンは予告しか見ていませんがクロエ・グレース・モレッツ版の『キャリー』を思い出しました。

結局、シズオは本気出して人生が変わったかと言われると、シズオ自身はあまり変わっていないような気もします。まぁ、でも宮田や市野、最初にシズオの担当編集者だった村上などは確実にシズオとの関係性の中で人生が変わってしまった感じです。宇波綾に関してはシズオと関わっていからの時間が短すぎたので変化はそれほどはっきり描かれていませんが父親への思いは変わっていったようにも感じられます。

通過儀礼という面から見ると、シズオは大人になることにも父親になることにも失敗しているようにしか見えません。そのうえ40過ぎて自分探しを始めるという無軌道ぶり。ある意味、人間の業を完全に肯定しているキャラクターですね。寅さんにもちょっと似ています。シズオ落語で言うと与太郎と放蕩者の若旦那をたしてさらにワガママにしたようキャラクターですが、与太郎や若旦那は結婚したり、子どもを作ったりはしませんね。でもシズオは与太郎や寅さんの延長上にいるキャラクターではないかと思います。


俺はまだ本気出してないだけ 5 (IKKI COMIX)
俺はまだ本気出してないだけ 5 (IKKI COMIX)

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