最初の『ごきぶり』以外は貸本漫画時代に描かれたもので、確かに絵の感じになり違いが見られます。『ごきぶり』もとりあえず空戦ものですが、基本的にはBC級戦犯の悲劇を描いたもので『私は貝になりたい』みたいな話です。
『撃墜』は太平洋戦争の開戦、1日目の坂井三郎の活躍を描いていた話で、構成は坂井三郎自身がやっています。『絶望の大空』は瀕死の重傷を負った坂井三郎が生還を果たす話です。坂井三郎は日本エースパイロットで、自身でも『大空のサムライ』を書いていました。『撃墜』は話が平坦で勝ち戦でも物型としては今一つな感じです。対して『絶望の大空』は、坂井三郎のちょっとした判断力が命取りなり、撃墜王が撃墜されかけるという話で、スリリングで悲壮感のある展開が素晴らしいですね。
連合艦隊司令長官、山本五十六が乗った一式陸攻がブーゲンビル島上空でアメリカ軍のP-38ライトニングの待ち伏せに会い撃墜された事件を描いた『ブーゲンビル上空に涙あり』も面白いですね。
それ以外の作品は残念ながらかなり完成が度低いように感じます。エースパイロット同士の戦いが空の上では決着が付かず、地上でお互い生身で戦ったり、アメリカ軍が日系人(しかも日系人1世)を太平洋戦争で無理矢理戦わせたり、実は日本軍も原爆の開発に成功していいたというトンデモな展開が所々に見られ、それはそれで楽しめます。
『台風爆弾』では製作助手の名前も書かれていて、1人は女性です。明らかに少女漫画風のキャラがちょっとだけ出てくるのですが、おそらくこの女性が書いたものと思われます。朝ドラの『ゲゲゲの女房』では南明奈がアシスタントをしていたりしていました。『ゲゲゲの女房』で南明奈が手伝っていたのは戦記物ではなく少女漫画でしが。そう言えばこの本には水木しげる名義ではない作品も収録されています。
ドラマの『ゲゲゲの女房』では「少年戦記の会」というのも出てきましたが、この本収録されている漫画のほとんど『少年戦記』という雑誌に掲載されていたものだそうです。『少年戦記』の表紙は小松崎茂が描いていたそうです。巻末に収録されている水木サンのインタビューでこのころ事が語られています。ドラマで「少年戦記の会」から公安警察にマークされるエピソードも本当にあった話だそうです。
インタビューの最後に水木サンは「もうエライ時代でしたから、あんな時代再び来させないためにも、もっと熱狂的に戦争物を読まなきゃおかしいですよ」と語っています。小林よしのりの『戦争論』は売れたみたいですね。水木サンの戦記物は基本的に負け戦ばかりで、勇ましがあまり全面に出てませんからね。この本に収録されている漫画も読んだ後に爽快感がある話は一つもありません。気分が重くなる話ばかりです。
大空戦―水木しげる戦記選集 (戦争と平和を考えるコミック)

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