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山際淳司の『たった一人のオリンピック』を読んだ

山際淳司のスポーツノンフィクション『たった一人のオリンピック』を読んでみました。この本に収録されている作品はもちろん過去にすでに発表されているものです。

今年、開催されてるはずだった東京オリンピックに便乗して企画されたようなタイトルの本ですか、実際に読んでみるとかなり様子は違いました。

表題作の『たった一人のオリンピック』は受験失敗し燻っていた津田真男という男がボート競技のシングルスカルでモスクワオリンピックを目指すという話。『回れ、風車』は1982年の全日本ソフトボール選手権の準決勝での三宅豊のピッチングについて書かれたもので、オリンピックのメダリストやメジャーな競技について書かれたものはバレーボールの猫田勝敏、ボクシングのマーク・ブリーランド、マラソンの瀬古利彦、宗兄弟、増田明美くらいでメインではありません。

やはり一番印象的だったのは『たった一人のオリンピック』です。名門進学校の東京教育大学附属高等学校に通っていて、東大を目指していた津田真男は受験に失敗、なんとか入った東海大学にはまとも通わず雀荘で過ごす日々から、一念発起し全く縁のないボート競技のシングルスカルでモスクワオリンピックを目指すという実際の話。ボートに専念するために就職せずアルバイトで食いつなぎ、シングルスカルで日本代表の座を掴むことはできたが、日本がモスクワオリンピックをボイコットしたためオリンピックに出場していません。アメリカン・ニューシネマ的な話の流れですが『ロッキー』の1本目のような感じもしました。津田真男は 『ロウイング、ロウイング』という話にも登場し、この話では弟子の足立崇がロスアンゼルスオリンピックを目指すという話でした。ライバルの堀内俊介はボート競技のエリートで津田真男や足立崇と全く価値観が違うというところが面白かったです。

『回れ、風車』はソフトボール版の『江夏の21球』みたいな話ですが、クライマックスについてはサラリと書かれていて、三宅豊という人物の全日本ソフトボール選手権までの道のりが深く掘り下げられています。

4大会連続日本代表としてオリンピックに出場しモントリオールオリンピック以外はメダルを獲得している猫田勝敏は39歳という若さで亡くなってしまったのも悲劇ですが、世界的なバレーボールの進化の波に取り残されてしまったのものも悲劇だったように感じました。

解説は『ルポ 百田尚樹現象』を書いた石戸諭。この解説も面白かったです。特に山際淳司が週刊サンケイに書いた『赤ヘル軍団の切り札”嗚呼!ナニワブシ野球”』という記事の一節が取り上げられていて、これが全く『江夏の21球』とは文体や内容が違うのが驚きでした。

『スローカーブを、もう一球』で取り上げた川端俊介には石戸諭も取材をしていて、その時のこともこの解説で語られています。そして三宅豊はその後の日本のソフトボールに与えた影響についても語られていて、今でも風車は回っているそうです。

たった一人のオリンピック (角川新書) - 山際 淳司
たった一人のオリンピック (角川新書) - 山際 淳司

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