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『しとやかな獣』を見た

角川シネマ有楽町で行われている『若尾文子映画祭 私のすべてを見せてあげる』で新藤兼人脚本、川島雄三監督の『しとやかな獣』を見ました。1962年公開の作品で4Kリマスター版でした。

『万引き家族』みたいな映画と紹介されいたような気がしますが、『パラサイト』の方が近いですね。団地に住む夫婦が部屋の片付けをしているシーンから物語は始まります。夫婦はなるべく金を持っていないようにテレビや家具を片付け、身なりもなるべく粗末なものに着替えます。しばらくしてその部屋にやって来たのは夫婦の息子が働いている芸能事務所の社長と経理係の女といかがわしい風体の歌手。社長は息子が会社の金を横領していることを夫婦に訴え、どうにかするように求めますが、夫婦はノラリクラリと交わしていく。芸能事務所一行が去ると息子と娘が部屋に帰ってくる。娘は流行作家の愛人で、その部屋は元々、作家が娘のために買い与えた部屋でいつの間にか、一家が住み始めた。そうこうしていると、作家や経理係の女(若尾文子)が代わる代わる部屋を訪れて、てんやわんやになるというお話。

川島雄三は『幕末太陽傳』が有名ですが『しとやかな獣』の方が私は楽しめました。『幕末太陽傳』は落語の『居残り佐平次』を下敷きにしていましたが、『しとやかな獣』は『文違い』を下敷きにしているように見えました。騙したつもりが実は騙さていて、食物連鎖のように金が吸い上げられている関係が面白いですね。『しとやかな獣』で食物連鎖の頂点にいるのは経理係の若尾文子。

若尾文子の美しさ、逞しさ、狡賢さも勿論、素晴らしいのですが、父親役の伊藤雄之助と母親役の山岡久乃の演技にも驚きました。基本的には惚けた感じが多いのですが、落語の言い立てみたな長台詞をまくし立てたり、急にシリアスになったり伊藤雄之助の怪演ぶりがたまりませんでした。一見、石井ふく子、橋田壽賀子のドラマのような上品ないつもの山岡久乃かと思っていたら、しれっと毒のあることを言う邪悪な山岡久乃を見ることが出来たのもラッキーでした。

インチキなジャズ歌手ピノサク・パブリスタを演じた小沢昭一も最高でした。インチキな英語を話す所はルー大柴ではなくトニー谷が元ネタだと思われます。ソロバンの代わりに飴の缶をパーカッションにする所も良かったですね。

芸能事務所の社長役のは高松英郎。この人は実直な役のイメージが強かったのですが、この映画の役はピンハネや脱税をしているうえに経理係の若尾文子を愛人にしているという役。しかもこの映画では最初は被害者面していたのが、徐々に化けの皮が剥がれていくのが見事でした。

テレビでジャズをバックに踊る若者たちの姿が流れると蕎麦を食べていた姉と弟が踊りだすシーンも印象的でした。ジャズがいつの間にか能楽に変わるところも絶妙でした。真っ赤に染まった夕焼けは『キル・ビル Vol.1』、『吸血鬼ゴケミドロ』の元ネタかと思ったら『吸血鬼ゴケミドロ』は松竹、で『しとやかな獣』は大映なので全く関係ないようです。

団地の部屋の周辺から舞台が移ることがないのはロマン・ポランスキーの『おとなのけんか』にも似ていました。サイレンの音が近付てい来て、父親が居眠りを始めるラストは『家族ゲーム』を思い出しました。全体的な構成も『家族ゲーム』は『しとやかな獣』を下敷きにしているような気がします。

50年以上にこんな映画が日本で作られていたのが驚きでした。この映画に見るきっかけを作ってくれた若尾文子映画祭に感謝です。この映画は舞台として何回か上演されているみたいです。2009年にはケラリーノ・サンドロヴィッチの演出で上演されていたようです。


しとやかな獣 4Kデジタル修復版 [Blu-ray] - 若尾文子, 伊藤雄之助, 山岡久乃, 川島雄三
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