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『トラオ 徳田虎雄 不随の病院王』を読んだ

選挙違反事件で問題になっている日本最大の民間医療法人徳洲会。その徳洲会を一代で築き上げた徳田虎雄の姿に迫ったノンフィクションが『トラオ 徳田虎雄 不随の病院王』です。ジャーナリストの青木理が書いています。

TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』で徳田虎雄と徳洲会の特集をした時に青木理が出演していてこの本についても語っていのがきっかけでこの本を読んでみました。徳田虎雄については大川豊の『誰が新井将敬を殺したか』で知っていましたが、最近の状態についてほとんど知らなかったので『Session-22』でトラオの病状を知り、けっこうショックを受けました。この本でトラオの病状を知りさらに驚きました。

この本は最初にトラオが罹っている、筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)という病気についの説明から始まります。このALSは体中の筋肉が動かなくなっていく病気で、トラオは目しか動かない状態で、やがて目も動かなくなってしまうそうです。でも頭ははっきりしているので徳洲会を率いる頭脳として今でも君臨しています。

青木理はトラオの生まれ育った奄美群島へ取材に行き、戦後の奄美群島とトラオが育った凄まじい状況を知ることになります。奄美群島は沖縄と同じ様に戦後はアメリカの統治下に置かれ、日本に返還されたのは1952年で、経済状況は昔も今も沖縄よりも更に厳しい状況です。

トラオが弟の死をきっかけに医者を志すあたりからは、スピードが上がりモーレツな感じになっていきます。徳洲会を日本最大の民間医療法人に仕立てあげ日本医師会の既得権益に挑み、政界に進出。トラオが政界に進出したのは医療改革を進めるためだったのです。

この本はある意味、トラオの立志伝、トラオの栄光と挫折みたいな感じです。トラオは戦国大名のよう感じもします。この本の中で青木理はトラオを「キワモノ」、「大いなる田舎者」、そして「汚くないウンコ」と呼んでいます。ふと思ったのですが周りと摩擦を起こしながらもひたすら前に進んでいく姿はデヴィッド・フィンチャーの『ソーシャル・ネットワーク』の中のマーク・ザッカーバーグに似ているような気もします。

私が感じるトラオの面白い部分は昭和の芸能人にあった破天荒さです。勝新太郎とか横山やすしなどに通じるものを感じます。トラオは車に乗ると交通法規は全く無視でとにかく急ぐことが一番で運転手は苦労したという話は横山やすしみたいです。吉田豪あたりが好きそうなエピソードもかなりあります。

徳之島を二分して戦った相手の保岡興治は自民党田中派の政治家で、トラオは田中角栄を金権政治家と批判していたのですが、トラオは自身も金権選挙で戦っていたので同じ穴の狢という感じがします。更に徳洲会の都会の病院で儲けた金で離島や僻地の病院の経営を支えるという手法も田中角栄の政治手法に似ている感じがします。

文庫版の最終章は徳洲会に東京地検特捜部の捜査が入ってから書かれたもので、なぜ今更、徳洲会に捜査のメスが入ったかの種明かしもされています。青木理は王国崩壊と書いていますが、まさに典型的なお家騒動(側近とファミリーの軋轢)が発端となり現在に至っているわけです。

猪瀬知事の借金問題は徳洲会のお家騒動がなければ、あるいは発覚しなかったかもしれません。しかし、石原慎太郎時代に副知事になり、後継になった時点で運命は決まっていたのかもしれません。猪瀬直樹はノンフィクション作家にもどって『トラオの肖像』を書いてみたらどうかと思います。そして映画にして欲しいですね。

トラオ 徳田虎雄 不随の病院王 (小学館文庫)

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