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山中貞雄の『人情紙風船』を見た

『人情紙風船』が川崎の市民ミュージアムで上映されたので見に行ってきました。

映画好きの知り合いの話で、色々なネットのレビューで高い評価をされている作品と紹介されたのが、この映画を知ったきっかけです。その知り合いも当時はこの映画は見ていませんでした。その時は既にDVDにはなっていたと思います。

山中貞雄という映画監督については、確か村上もとかの漫画『龍-RON-』に登場していた記憶があります。『龍-RON-』はちゃんと読んでいないので山中貞雄が実名で登場していたのか、山中貞雄をモデルにしてキャラクターが登場したのかははっきり覚えていません。

この映画を見る前に、改めてネットのレビューなどを見てみると、相変わらず高評価なレビューばかりで、かなり期待してしまいました。

市民ミュージアムでチケットを買う入り口のところには張り紙が貼ってあり、「古い作品のため、お見苦しい部分もありますがご了承下さい」みたいなことが書いてありました。この映画は1937年に公開された作品なのです。

画質は想像してよりも悪くはなかったです。何箇所かフィルムが飛んで閉まっている部分がありましたが、見にくい部分はそれほどありませんでした。音声もノイズで聞きにくいということはありませんでしたが、髪結の新三を演じていた中村翫右衛門が『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグ並に早口だったりして、台詞が多少聞き辛いというところはありました。

江戸時代の貧乏長屋が舞台になっていて、物語は首吊り自殺から始まり、心中で終わります。こんな書き方をすると暗い話のように思えるかも知れませんが、前半はそんなに暗くはなく、かなり明るく、滑稽な場面が展開されます。

首吊りした人の通夜にかこつけて新三が大家に金をせびり、長屋のみんなと通夜をやるのですが、このシーンは通夜ではなく酒盛り、宴会にしか見えません。

この映画は落語の貧乏長屋をそのまま実写化したような映画といった感じです。長屋の住民、浪人、長屋の大家、武士、質屋といった登場人物は落語の登場人物そのものです。『らくだ』、『黄金餅』といった噺を私は思い出しました。『芝浜』や『文七元結』のような人情噺、ハッピーエンドではありません。

いい加減だけど、軽く要領のいい髪結の新三と真面目だけが取り柄であまり融通の聞かない浪人の海野又十郎を中心に話が展開されます。この二人のキャラクターの描き分けは非常によく出来ていて、普遍的で現代にも通じるようになっています。

話の展開、伏線の張り方や回収も非常に滑らかで古さほとんど感じません。セットや画面の構成も1937年の映画とは思えないくらい凝ったものになっていました。画面は非常に色々な事を語っているように見えますが、「語りすぎ」、「説明しすぎ」になっていない所もこの映画の大きな特徴だと言えます。新三がヤクザたちに袋叩きにシーンで明らかに殴ったり蹴ったりしていないように見えたのは笑いました。

山中貞雄はこの映画を27歳の時に撮ったというのも驚きです。山中貞雄は日中戦争に従軍し、28歳で亡くなっています。


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