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水木しげるの『総員玉砕せよ!』を読んだ

ゲゲゲの娘たちも子供の頃に読んでトラウマになったという『総員玉砕せよ!』を読んでみました。

南太平洋のニューブリテン島のバイエンを占領した日本陸軍の悲惨な戦いを描いた戦記漫画で、90パーセントは事実に基づいているそうです。この漫画に登場する丸山二等兵は水木サン自身のようです。戦記漫画ですが、少しもカッコいいシーンはありません。惨めな兵隊たちと無能な指揮官の姿がリアルに描かれています。

いきなり最初のシーンが丸山と赤崎がピー屋(慰安所)に行く話と言うのは強烈で、一筋縄ではいかない感じです。ピー屋はすごい行列で丸山と赤崎は女を抱くことはできず、『女郎の歌』を聞くだけで帰ることになります。

バイエンへの上陸はアメリカ軍の抵抗は全くなく、簡単に上陸は成功します。上陸後しばらく戦闘はなく淡々とした日常が描かれています。淡々とした日常といっても、丸山たち初年兵は何かに付け上官に殴られます。「初年兵とたたみは、たたけばたたくほど、よくなる」と言っては上官は丸山ら初年兵たちを殴り、正月と言ってはまた初年兵たちを殴ります。

敵の攻撃がなくても人が実にあっけなく死んでいく姿が淡々と描かれているのが何とも言えない感じですね。川に落ちてワニ食われたり、正月用に捕まえた魚を丸呑して窒息死したり、デング熱やマラリアでも次々に日本兵は死んでいきます。

アメリカ軍の反撃が始まると日本軍はなすすべなく敗走を繰り返し。楠木正成を心酔している支隊長の田所少佐は玉砕命令を下します。

ラバウルの兵団司令部も含めて日本軍の指揮官たちはほとんどが妙なプライドに取り憑かれたような人間ばかりで、兵隊の命なんて屁と思っていないはばかりか、本気で戦闘に勝ち、生き残ろうという意欲もほとんど感じられない人ばかりです。

そんな中、中隊長は田所少佐にゲリラ戦で少しでも時間を稼ぐこと主張したり、軍医は参謀に人命を大事にしろと言ったりします。そんな二人の意見は通ることなく二人とも最後は自決していきます。

丸山たち兵隊は常に腹を空かしていて、兵隊たちの話題は食事の話。そして、女の話。小隊長を交えて、支那にいたときスペインの女とやった話やロスケとやった話をしているとマラリアで40度の熱で寝ていた兵隊が起きだして「そりゃ、なんてったって日本の女が一番だよ」というシーンが笑えます。おまけにこの男は童貞。

最後の突撃の前に兵隊たちは『女郎の歌』」を歌い、「女郎のほうがなんぼかましだぜ」と言って死んでいきます。そして、日本兵の死体のシーンが続き、最後は白骨化した死体で終わります。確かに子供が見たらトラウマになるような容赦ない悲惨さです。『はだしのゲン』もトラウマになりますが、『はだしのゲン』の場合は戦後編など未来への希望を描いている部分があります。しかし、この漫画には未来への夢や希望は全くありません。

『大空のサムライ』の坂井三郎さんに水木サンは「戦記物はとにかく勝たなければ売れない」とアドバイスされたというエピソードを聞いたことがあります。しかし、水木サンはどうしても戦記物の漫画をカッコよく勇ましく描くことができないそうです。朝ドラの『ゲゲゲの女房』の中でも水木サンを演じている向井理もそんなセリフを喋っていました。

この漫画はNHKでドラマになっていて、私は漫画より先にドラマを見ました。最近も再放送していたようですね。ドラマの方も頑張ったと思いますが、原作の漫画の方がやはり衝撃的ですね。戦争の現実の惨めさや狂気を淡々と、同時にはトボけた感じ描いているのが絶妙です。

総員玉砕せよ! (講談社文庫)
総員玉砕せよ! (講談社文庫)

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