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『死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人』を読んだ

この本は2002年7月、山口で母親を金属バットで殴打、殺害し、2005年11月、大阪のマンションで二人の姉妹をナイフで殺害したうえに火を放った山地悠紀夫について書かれた本です。山地悠紀夫に対しては2009年の7月28日に死刑が執行されています。

二つの殺人事件はどうして起こったのか、山地悠紀夫とはどんな人間だったのか共同通信の記者である池谷孝司記者と真下周記が地道な取材で二つの殺人事件、そして山地悠紀夫が抱えていたアスペルガー症候群や発達障害について迫っています。

二つ目の殺人事件のときの「母親を殺したときの感触が忘れられなかったから」という供述と、送検されるときに見せた山地悠紀夫の表情や当時のマスコミの扱い方からは快楽殺人という印象が強いのですが、この本を読む全く印象が違ってきます。

この本を読み進めていくと、どうしても山地悠紀夫に感情移入してしまいます。アルコール依存症でDVを働く父親と借金漬けで買い物依存症、そして育児放棄気味な母親に育てられ、発達障害のため学校では虐められ、どこにも居場所がなかった山地悠紀夫。だからと言って自分の母親や見ず知らずの姉妹を殺していいわけはもちろんありません。

山地の少年院時代の話は全体的に重苦しいこの本の中では、ほんの僅かですが明るい感じがする部分に感じます。アスペルガー症候群の山地にとって規則正しい生活が続く少年院での生活は娑婆よりも居心地が良かったようです。しかし、アスペルガー症候群は人に対しての共感する気持ちや反省する気持ちが乏しく、事件についてはどうしても反省することができなかったそうです。

少年院を出るときにもう少し周りの人間が山地の面倒を見られる状態にあれば、第二の殺人事件は防げたのではないかと思ってしまいます。少年院を出た山地はパチンコ屋で働き始めるのですが長続きせず、パチスロのゴト師の集団に入り、そこでも居場所を失い第二の殺人事件に至っています。

この本では何人かの精神科医や弁護士に山地についてのインタビューも収録されています。その中で私が興味深く感じたのは、社会で居場所がなくなった人を割と簡単に受け入れてくれる所はヤクザか宗教と答えている人が複数いたことです。今の日本で最終的なセーフティーネットとして機能しているのはヤクザと宗教ということのようです。山地が最後に身を寄せていたのもパチスロのゴト師の集団でした。

私はこの本を読んで思い出したのは、同じく殺人事件を起こして死刑になった永山則夫のことです。永山則夫も極貧の中で育ち殺人事件を起こして死刑になっています。山地悠紀夫と永山則夫を単純に比較したりすることはできませんが、社会や環境が犯罪者を作るという考え方からするとどうしてもこの二人の姿が私には重なって見えたりします。

余談ですが表紙のイラストは漫画家の佐藤秀峰の手によるものだそうです。


死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人
死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人

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